皆様は、「うすはりグラス」という名を目にした事があるでしょうか。うすはりグラスは、日常で飲むお酒を「ちょっと特別」に変えてしまう、魔法のようなグラスなのです。
今回は「日常」を「非日常」に変えてしまう、うすはりグラスの素晴らしさをお伝えしたいと思います。
極限まで削ぎ落された存在感。飲み物を最大限に引き立てる「うすはりグラス」とは?
ただいま LT LOTTO AND TRESでは「日本の夏2」展を開催中です。
日本ならではの夏を心地よく過ごすためのアイテムをご用意しております。人気のうすはりグラスや錫製の酒器など父の日の贈り物にも最適です。 pic.twitter.com/Z3QGhLtWtB
— VIORO_tenjin (@VIORO_tenjin) 2013, 6月 4
うすはりグラスの厚さは、1㎜以下。注がれたドリンクを飲む時、グラスに唇をつけているのにも関わらず驚くほどグラスの存在を感じません。極限まで薄くされた飲み口が、注がれたドリンクを最大限に引き立てるのです。
ビールやウイスキー、焼酎をはじめ、様々な種類に対応したうすはりグラスがあります。それぞれが最も美味しく飲めるように研究されたフォルム・薄さ。器が違うだけでこうも味が変わるのかと、うすはりグラスのファンは全国に広がっています。
1日2000個の生産が限界の「こだわりの製法」
製品として仕上がるまでの工程ひとつひとつを手作業で行う為に、工場がフル回転で作業を行っても1日たった2,000個の生産が限界だそうです。うすはりグラスに携わって数十年の名工がもってしても、まだその道を追求していきたいと言わしめる程の細かく緻密な作業が求められます。そんな、うすはりグラスの作業工程をご紹介します。
1.「ガラスの玉取」
「タネ」とも呼ばれる、ガラスの原材料を1,300度に熱された窯から取り出す作業。簡単に思えるかもしれませんが、この時点で既に職人の技によっては仕上がりの善し悪しに影響が出てくるというのですから驚きです。
2.「吹き」と「徐冷」
皆さんも、TVでガラス細工の作業を見た事があるかもしれません。職人さんが、ぷーっとガラスを吹いて膨らませているあの作業です。形作った時点では、ガラスの温度は500度以上。今度はそれを、ゆっくりと時間をかけて冷やしていきます。
3.「火切り」と「摺り」
充分に冷却されたガラスの口を開ける火切り。そして火切りで口を開けたガラスの断面を研磨する作業です。研磨する対象がしっかりしていれば簡単ですが、厚さ1㎜以下の華奢なガラスを研磨するのは、想像を絶する熟練の技が必要なのです。
4.「口焼き」
最後に、行われるたった数秒だけの炙り作業。これが、飲んでいる時に唇が触れているのか分からなくなる様な独特のうすはりグラスの感触を生み出すのです。
うすはりグラスの製法は、もともとは電球のための技術だった
あなたの知らない"うすはりグラス"展7/6(日)まで。 pic.twitter.com/wgBkGXMrUi
— KATSUHIKO NAKANO (@hisfactory) 2014, 7月 5
うすはりグラスを製造しているのは、「松徳硝子株式会社」。現在の代表で3代目になり、その歴史は大正11年に遡ります。今ではうすはりグラスで有名ですが、なんと始まりは電球用ガラスの生産工場でした。昭和30年の年に丸い電球のガラスを作る技術から派生して、うすはりグラスの原型が誕生したのです。
始まりは電球。ただ一心に良いものを生み出し続けると言うガラス職人のこだわりにより、うすはりグラスができたのです。人の生活に寄り添い、明るく照らすと言う意味では、電球もうすはりグラスで飲む美味しいお酒も変わらないのかもしれません。
飾らず日常で使ってほしいからこそ、こだわり抜く
実は、前述した作業工程とは別に、出荷前には更に職人達の厳しい検査が行われます。そのままで売り出しても一般の人達にはきっと分からない、少しの気泡も見逃さず、なんと4割近くが検査を通らないと言う、恐ろしく厳正なチェックがあります。
そして、それを通過したグラスだけが販売されるのです。それは、うすはりグラスを箱に入れて展示する様な工芸品としてではなく、あくまでも日常で使うのに耐えうるだけの強度を保ったグラスとして惜しみなく提供する、職人達の信念が伝わってきます。
一切の妥協も許さない「うすはりグラス」。その贅沢な職人技を知ったら、自身の唇で確かめずにはいられません。
▼出展
松徳硝子
http://stglass.co.jp/company/index.html
AUSLESE
http://www.shiseido.co.jp/auslese/otokonoryugi/glass1.html