日本国内のメガネ人口が6000万人と言われていますが、その国内製造のシェア96%を誇るのが福井県鯖江市です。世界で初めてチタンを用いたメガネフレームの製造技術を確立し、その後も高い技術力とデザイン力で、日本国内はもちろん世界へまでもメガネと言えば「福井県鯖江市」という名が浸透しています。
なぜ、鯖江市のメガネはここまで浸透することになったのか。
それは、優れた技術を持っているだけではなく、「売る」ための取り組みを地域をあげて行ってきた結果でした。
理想的な素材だからこそ、加工するのが難しい
鯖江市には47軒の製造メーカーと、500社ほどのメガネ関連事業所があります。
メガネフレームとして世界のスタンダードへと上り詰め、ここまで広がった背景は、軽くて丈夫で、しかも金属アレルギーを起こしにくい金属チタンを用いたメガネフレームの製造技術を確立したことが第一にあります。
メガネフレームに求められることは、「レンズを正しい位置に不快感がなく長時間固定できて」、「軽く丈夫」、更に「ファッション性がある」ことです。
これらを満たすためには、軽さ、丈夫さ、耐久性、耐食性、柔軟性、弾力性があることが条件になります。それらを実現するのが「チタン」なのです。
しかし、軽くて丈夫などの条件を持ち合わせているチタンは裏を返せば「加工しにくい素材」ということです。
各種強度を兼ね備えた、理想的な金属材料ですが一般的には「難削材」と言われていて、加工のためのドリルが折れてしまうほど。溶接や表面処理などの加工も難しい素材なのです。
そんなチタンの加工を可能にしたのが、他では決して真似できない日本の職人ならではの、細やかな技術とこだわりの結果でした。
機械で完結しない、職人の手作業
メガネフレームをつくるためには1本につき250以上もの行程が必要になります。
そこには、金型造り、プレス加工、ロウ付け、研磨、表面処理……。どのプロセスにおいても、チタンを加工するには機械だけでは完結することはできません。
熟練された職人の感覚によって機械を使いこなし、仕上げには職人の手によって0.1mmの世界まで精密さを求めて削られているのです。
機械の性能を生かす職人の腕、更に細かな手作業を兼ね備えた結果、メガネフレームに適した素材であるチタンを思い通りに加工する技を確立することができたのです。
地域をあげて「THE291」ブランドを創り上げる
今日も、THE291のフレームです。
今回は、着物にとっても似合うフレームかな?
素敵な細工ですね!
和が似合う!流石 福井職人さん!? pic.twitter.com/kEbtIczSI5
— 株式会社 一耀 (@ichiyoukasihara) 2013, 9月 22
技術を持ったうえで、ここまで認知度を上げて「鯖江ブランド」となったのは地域全体での取り組みの結果でもあります。
2003年3月、福井県眼鏡協会と鯖江商工会議所が主体となり、産地統一ブランド「THE291」が誕生しました。「291」と書いて「フクイ」と読みます。
これまで地域で培ってきた技術とデザイン力で作り上げたメガネに「THE291」の称号を与えることで、「高品質」を売りとするブランドの構築を図ろうというものです。
これにより、高品質なフレームは福井産であることを消費者に対して強くアピールすると共に、製品開発から宣伝、販売にいたるまで、一貫して産地の企業が行うことで、海外製品に対抗することを狙っています。
「作るだけ」では終わらない。「作って売る」産地へ
この取り組みを通じて従来の受注生産中心から脱却を図ると共に、各企業が自社販売に取り組んでいくことで、これまでの「作る産地」から「売る産地」への転換を目指しています。
海外から低コストで生産可能な製品が、日本にどんどん流入してきています。そんな中でも、世界を大常するメガネ産業であり続けることを目指して、鯖江市は業界と行政と連携しながら地域をあげて取り組んでいます。
作るだけではなく、売ることができる産地として君臨する「鯖江のメガネ」。今後のさらなる発展が楽しみです。
出展:
鯖江市役所
http://www3.city.sabae.fukui.jp/jiman/sangyo/megane/syousai/syousai.html
nippon.com
http://www.nippon.com/ja/views/b00601/
∞sabae
http://www.sabaemade.jp/#