歴史の授業で、誰もが1回は耳にしたことのある“産業革命”。
200年以上も前に起こった製造業の革命は、ものづくりの構造を大きく変えました。
その後、幾度ものターニングポイントを経て、2016年のいま、製造業には4度目の大きな転機を迎えようとしています。
最初期の革命から200年経った今では呼び方も変わり、現在起こっている革命は“インダストリー4.0”と言われています。
ところで皆さん、そもそも製造業の革命が4回もあるなんてご存知でしたか。なんとなく知っているつもりでも、具体的には分からない、という方も多いでしょう。そこで今回は、製造業に起きた革命を時系列で追い、インダストリー4.0とは一体何なのかを、クイズ形式でお届けします。皆さんは何問正解できるでしょうか。
Q1:インダストリー1.0が最初に起こったのはどこの国?
1.フランス
2.イギリス
3.アメリカ
世界で最初に起きた産業革命からの出題です。
歴史の教科書にも載っている有名な出来事なので、これは正解したいところ。皆さんいかがでしょうか。
正解は、 2のイギリス!!
世界で最初の産業革命=インダストリー1.0は、18世紀後半から19世紀のイギリスが舞台。この革命では、製造というプロセスの根本に変革が起きました。工場制機械工業の発達です。以前、製造業で主流だったのは、工場制手工業と呼ばれる手法。工場に労働者を集め、分担して手作業をしていたので、非常に時間がかかっていました。
それが工場制機械工業になることで、文字通り機械を用いて、工場で製品を作ることができるようになりました。製造方法が手作業から機械へと移ったことにより、作業効率が大幅に改善したことは言うまでもありません。
機械が発達した背景には、蒸気機関という動力源の存在があります。
イギリスの発明家であるジェームズ・ワットが蒸気機関を改良したことにより、さまざまな機械が蒸気の力で駆動するようになりました。蒸気機関は鉄道にも活用され、蒸気機関車の登場は、人と貨物の移動を容易にし、さらに社会の工業化を加速させたのです。
Q2:インダストリー2.0で生産効率が圧倒的に向上した自動車メーカー、フォード社は1908年からの約20年間で、何台のT型フォードを生産したでしょう?
1.約15万台
2.約150万台
3.約1,500万台
19世紀後半から20世紀初頭に起こったインダストリー2.0では、電力を動力源とする製造方式が発達しました。
フォード社といえばアメリカの産業界を代表する自動車メーカーとして、車好きでなくともその名を聞いたことがあるのではないでしょうか。フォード社はこの時代、コンベアの流れで車を大量生産する革新的な方式を生み出し、業界全体に大きな影響を与えました。いち早く電気を利用し生産ラインを構築したフォードの効率化への意思は、『フォーディズム』とも呼ばれます。
さあ、いよいよ正解発表です。
正解は………….3の約1,500万台!!!
なんと、1年間で約75万台を製造していたことになります。
インダストリー1.0では、紡績をはじめとした軽工業の大量生産化が進みましたが、インダストリー2.0によって、“重工業”分野での大量生産が実現したのです。
Q3:現在のコンピュータの先駆けとなる「ノイマン型コンピュータ」が誕生したのはいつ?
1.1949年
2.1956年
3.1967年
第二次世界大戦後になると、製造業は再び大きな転機を迎えます。その契機となったのは、コンピュータの普及です。生産の自動化・効率化が図られるようになった革命は、インダストリー3.0と定義されています。つまり、この革命の母とも言えるのはコンピュータ。そしてコンピュータの祖が誕生したのが1949年です。ということで、正解は1の1949年!
機械の操作が手作業の場合、人件費が発生するだけでなく、ヒューマンエラーという宿命的な課題も存在します。これがコンピュータによって自動化されることで、より効率的にミスなく製造することができるようになりました。
インダストリー1.0から2.0というプロセスは、”大量生産”がキーワードでした。そして3.0というフェーズでは、“効率化”という概念が存在感を発揮し始めたのです。では、現在進行中のインダストリー4.0とは一体どのような革命なのでしょうか。
Q4:現在進行中のインダストリー4.0を象徴する、ドイツ政府が提唱するキーワードはなんでしょうか?
1.考える工場
2.止まらない工場
3.安全な工場
いよいよ最後の問題になりました。
インダストリー4.0は、ドイツ政府主導で現在進められている国家プロジェクトで、アメリカや日本をはじめとしたものづくり先進国に大きな影響を与えています。この革命の主役はIoT(Internet of Things/もののインターネット)です。
IoTというキーワードで答えが分かった方もいるもかもしれません。
そう、最後の問題の答えは…..1の考える工場です!!!
2011年に提唱されたインダストリー4.0は“smart factory(考える工場)”をコンセプトにしています。“考える”とは、工場内外にある“もの”と“もの”がリアルタイムに連携して、生産の無駄をなくすことを指します。
工場内で部品が足りなくなったら、自動的に工場外へ情報が送られ、自動的に工場に部品が供給されるような仕組みなどが具体的な例。インダストリー3.0時点では、コンピュータの操作は人が行うことが想定されていましたが、例に挙げたような仕組みが整えば、人がいなくても生産ラインを回し続けることが可能です。
工場機械、原材料といった必要要素がIoTによってリンクすると、工場機能には今までにない柔軟性は与えられます。例えばそのフローは以下のようになります。
何かしらのオーダーが入る。
↓
その原材料の在庫状況、運送などを機械が自動で判定し、アレンジする。
↓
自動で生産ラインを構築し、製造を開始する。
いかがでしょうか。工場にまつわる要素がIoTで接続されれば、これまで人の手が必要だった各フローは自動化され、”考える工場”は今までにない柔軟性と即応性を獲得するのです。
インダストリー4.0によって、ものづくりは“自動化”のフェーズへ
大量生産、効率化を経て、ものづくりは新たな局面を迎えています。
それは、 “高度に自動化されたものづくり”です。
機械が自ら考え、生産の自動化が発達すれば、“注文に応じて作るものを柔軟に変更できる”生産ラインを回すという、これまで人の手が必要だった、生産のアレンジメントが機械のみで可能になるでしょう。
テクノロジーの発達により、機械が成し得る範囲が急速に広がっている現代。
人と機械がどのように関わり合うのが最適な形なのかを考えることが、ものづくりの更なる発展につながるのではないでしょうか。