日本中に感動を呼んだドラマ「下町ロケット」。
小さな町工場の仲間たちがものづくりへのプライドを持ち、一歩も譲らない素晴らしい製品を開発した姿は大きな感動をよびました。その放送をきっかけに、下町の町工場に注目が集まりはじめています。
工場ごとに培ってきた技術力、そして眩しいほどにひたむきなものづくりへの想いを支えに、今日も下町から世界へ誇れる製品を産み出し続けています。今回はそんな町工場で生まれた製品の誕生ストーリーをご紹介します。
これぞまさに「下町ロケット」!植松電機の苦難と今
北海道は赤平市にある植松電機は「リアル下町ロケット」「下町ロケットのモデル企業」と評判になっています。
地方の少人数の工場が宇宙開発に乗り出し、なんとNASAと無重力装置を共同開発し、その装置をJAXAが使っています。
しかし、そこに至るまでは苦難の連続でした。大きな取引先から急に突き放されて2億の借金を抱えたり、他企業から特許侵害の嫌がらせを受けてあらゆる取引先から総スカンを食らったりしたことも。実際には特許権侵害は他企業の方であったことが証明されました。
それからは徐々に取引先の信頼を取り戻しながら、宇宙関連の企業として押しも押されぬ存在に進化していったのです。逆境の中でも、ものづくりへのプライドを持って前に進んできた植松電機のホームページのトップにはこう記されています。
「『どうせ無理』という言葉は、人の可能性を奪います。人の可能性を奪わない社会を目指します。」と。
株式会社植松電機HP:http://uematsudenki.com/UE1/HOME.html
立ち上がったものづくり企業!「下町ボブスレー」が向かう未来
東京大田区の町工場グループ集まって共同開発したボブスレー競技用のそり。その名も「下町ボブスレー」が、2016年にジャマイカの代表チーム用に採用されました。
これまでこの開発チームは苦難の連続でした。日本代表チームから何度も不採用の通達を受け、それでも諦めずに開発を重ねてそりの精度を高めてきました。そしてジャマイカチームの採用をかけて下町ボブスレーの走行テストを行い、選手達の要望に応えながら改善を重ねて、遂に採用を勝ち取ったのです。
今後もまだ、資金調達などの課題はありつつも、下町ボブスレーチームは戦い続けます。そしてジャマイカチームは町工場グループの夢ごと背負って、最高のそりである下町ボブスレーに乗り込み次のオリンピックに挑む事になるのです。
下町ボブスレーネットワークプロジェクト公式サイト:http://bobsleigh.jp/
プロペラのない風力発電?下町風力発電の起こすエネルギー革命
台風が多い日本ではあまり見かけない風力発電。
ですが、東京墨田区の町工場であるチャレナジーが、世界初のプロペラの無い風力発電機を開発し実用化に取り組んでいます。チャレナジーの取り組みの元になっているのは、今もこの世界中で約13億人が電気のない生活をしている事。そして何より、東日本大震災時のいたましい原発事故を絶対に再発させない為にはそもそも脱原発をする事。この2つが柱になっています。
チャレナジーは自社が独自開発した台風のような暴風の際にも安全に電気を供給出来る「垂直軸型マグナス風力発電機」で、全人類が安全に電気を使える世界を創りたいと言う強い思いを軸に活動し続けています。
チャレナジーの思いに共感・賛同した人が多く、クラウドファンディングでの資金調達も見事成功を収めました。
株式会社チャレナジーHP:http://challenergy.com/
アップル社も認めた!金属加工のプロ集団
iPodの裏面の鏡面磨きをしているのは、日本の企業だという事をご存じでしょうか。新潟にある小林研業株式会社のことはマスコミでも取り上げられていましたので、知っている方も多いかもしれません。
昭和から続いていた日本の研磨企業数は、安価な量産品の生産で中国企業等の追い上げをもろに受けて減少していく一方でした。そこで、小林研業はそこで自社のあり方を振り返り、決めました。プロの職人達の集まりであり、安易に量産するのではなく1つ1つに魂を込めた小林研業にしか出来ないものづくりを改めて信条にしていこうと。培ってきた伝統技術を活かした磨きの精度の高さがアップル社にも認められています。
最近では磨きの熟練の技を活かしたエコカップと呼ばれる、最高にビールを美味しく飲めるカップも作り始め、既に賞賛を受け始めています。
小林研業株式会社HP:http://www.kenmaya.co.jp/
天文分野から医療現場へ。人の命に貢献する顕微鏡。
東京三鷹市にある三鷹光器株式会社はそもそも、天体望遠鏡のメーカーでした。
作ってきたのは、いわゆる一般向けの天体望遠鏡と言うよりはオーロラやハレー彗星を観測する様な高度な望遠鏡であったり、宇宙観測機等でした。
しかし現在では高い技術力を買われ、医療分野、そして宇宙開発産業にも進出しています。
「創造と信頼」を社のテーマに歩み続けてきた三鷹光器株式会社が相棒として選んだパートナー企業は、あの有名カメラメーカーのライカです。天体望遠鏡で培ってきた技術で、脳神経外科手術に不可欠な手術顕微鏡を産み出したくさんの人の命を救っています。
その後も製品の精度だけを高めることを考えず、第一線で働くドクターやナースの動線を常に考慮し、都度現場からあがる「困った」の声を解決するべく今日もまた動き続けています。
三鷹光器株式会社HP:http://www.mitakakohki.co.jp/
町工場からの壮大な夢も「為せば成る」
今回ご紹介させていただいたどの企業も、不器用に見えるまでに実直かつ誠実な姿勢を見せ続けています。
植松電機の植松社長が、かつてロケットに憧れた少年であった頃に母親から送られたという言葉が「思うは招く、為せば成る」だったそうです。
教師から壮大な夢を諦めるよう言われ、うちひしがれた植松社長へのこのエール。どの企業の努力も形は違えど、この言葉に尽きるのではないでしょうか。
素晴らしいものづくりを見せてくれる町工場の活躍を、今後も見続けたいと強く願わずにはいられないのです。