2016年春夏の新作を発表するファッションウィークがパリで開幕。そして、同国でのランウェイショーに3回目の参加を果たした「アンリアレイジ(ANREALAGE)」(デザイナー 森永邦彦氏が手がけるブランド)がその初日を飾りました。
顧客たちはヘッドフォンを着用しながらスマートフォンの画面越しでランウェイを見るなど、日常と非日常・現実と非現実が交差する、これまでにないショーを目の当たりにしました。彼のショーは、今までのファッションの常識をぶち壊すべく、斬新で挑発的な演出を目的としているようです。
そして、「REFLECT」をテーマにした彼のコレクションのアイテムは、ストロボなどの光の反射に反応する「再帰性反射」を応用した特殊な素材を使用し、一瞬にして違う柄や色が現れるという、まったく違う2つの顔を持つ服を提案しています。
そんなショーの模様がこちらの動画です。
アンリアレイジの原点・森永邦彦が目指したところ
デザイナー 森永邦彦(もりなが くにひこ)1980年東京生まれ。早稲田大学入学~卒業後はバンタンキャリアスクールで学び、2003年には「ANREALAGE」(アンリアレイジ)を日本のアパレルブランドとして設立しました。そのブランド名は、real(日常)、unreal(非日常)、age(年代)をミックスした造語を由来としています。
そんな彼は、服の基礎はしっかりと踏まえた上で、ポイントをおさえながら「壊している感」を演出しているコム デ ギャルソンに衝撃と感銘を受け、人が気付いていない部分に価値を付けたり、違う価値をプラスした洋服作りをしたいと強く感じたそうです。そして、それを見た人が思わず「クスッ」と笑ってしまうような、少しの不思議とユーモアを込めたデザイン作りを目指しています。
アンリアレイジの奇抜なコレクション
「ANREALAGE」では、目まぐるしく移りかわる日常の中で、見過ごされがちな部分にフォーカスした服を企画し提供しています。例えば、シャツやスカートなどの何気ないベーシックな服を、上下左右に反転させたディテールを繰り返すという手法を。これで見慣れている日常に変化を与えています。
千人針のステッチ柄が浮かび上がる「Keisuke Kanda(カンダ ケイスケ)」とコラボしたドレスや、映画「スターウォーズ」の公式コレクションアイテムである、星柄からハイスペース柄に変化するデザインまであるのです。2,000ピースにものぼるパーツを組み合わせたジャケットなど、国内外のブランドでもなかなか見ることができないデザインも、アンリアレイジならではの発想から生まれたアイテムといえそうです。
そしてそのジャケットの製作担当者は、ブランドの設立当初から在籍しているデザイナーがたった一人で手掛けていた、というのにもまた驚かされます。
“日常”を“非日常”に表現する
デザイナー 森永氏は、自分がよく目にしている日常的な現象をベースにして服作りをしています。例えば、太陽光を浴びると色がじんわりと変わり、白から浮かび上がるものや、影で浸食されるイメージを服に定着させたり記憶させたりするという発想からの服作りにも取り組んでいます。
着ている服に影が乗るというごく日常的な現象を、非日常的なこととして具体化しながら表現しています。さらには、電気がない暗闇で物を探すときに光で照らすという、誰もが経験がある日常もたちまち服作りのヒントにしてしまうのです。
黒い生地に光を当てると柄が浮かび上がる服は、暗闇の中でカラフルなものが現れるような、はっとするようなきれいさを再現したデザインです。彼の作品は、このような日常で何度も目にしているような現象を、非日常的に表現することをテーマにしながら、シーズンごとに作品を発表しています。
今後も森永氏が表現する「テクノロジー×ファブリック」に目が離せない!
そんな個性的な感性を持つ森永氏は、日本の新しい技術にとても興味を持っています。コレクションで使用したフォトクロミックのように色が変化するものや3Dプリンターを用いた服の製作、コンピュータジャガードを使用した素材など。
このように、日本だからこそ実現できる最新のテクノロジーをこれからのファッションにどう応用させるのかなども、目を輝かせながら語っています。そんな、彼にしかできない斬新なアイデアが盛り込まれた新しいデザインで、今後のファッション界にもさらなる改革を起こすに違いありません。