「人間が想像できることは、人間が必ず実現できる」とは、”SFの父”とも呼ばれるフランスの小説家、ジュール・ガブリエル・ヴェルヌの言葉です。
3Dプリンターこそが、現代で最もこの言葉を地で行くテクノロジーではないでしょうか。
「立体をプリントアウトして、好きなものを作ってしまおう!」という画期的な技術で数年前から話題になっている3Dプリンターですが、その精度や規模は年々さらに進化を遂げ、現在ではついに建築物までもプリントすることが可能になっています。
そこで今回は、3Dプリンターで出力された世界各国の建築物をご紹介し、その無限の可能性と驚愕の進化をお伝えしたいと思います。
3Dプリンターで出力された、世界の5つの建築
1.これが世界初!カリフォルニアの3Dプリントパビリオン
世界で初めての3Dプリンターによる建築物はこちら、2013年にカリフォルニアを拠点とするアーティストと建築家のデュオ「Smith|Allen」によってつくられた「Echoviren」というアート作品です。
バイオプラスチックで作られた「Echoviren」は、しばらくすると鳥や昆虫などの棲みかになり、最後には自然に朽ちて消滅していくという作品です。最小容積で巨大な木を維持している「セコイア」の樹に着想を得て、その細胞構造を真似て作ることで建築物としての強度を実現しています。
全てのパーツを印刷するのには2カ月と1万800時間を要したそうですが、組立はわずか4日で完了してしまったというのが3Dプリンターのすごいところ。このような複雑な建設物でも、人手が必要な部分はごく一部なのです。
2.困難だった曲線も実現!オランダの街に描かれていく鉄橋
オランダのアムステルダムでは、2015年より3Dプリンターを使って鋼橋を架設するという世界初のプロジェクトが進行中です。
このプロジェクトは「MX3D」というオランダのスタートアップ企業を中心に、様々な団体の支援を受けながら進められています。これまでは金属という固い素材を3Dプリンターで出力する場合、強度を落とさずに曲線に仕上げることは技術的に困難とされていました。しかし、MX3Dが独自に開発したアームロボットを使用することで、その困難が克服されたそうです。これまでのプリンターとは違ってアームを縦横無尽に動かすことができるため、これを使えばどんなものでもプリントすることができるのです。
動画でも表現されているように、まるで現実世界をキャンバスとしてものを描いていくかのように建設していくプリンター。SFの世界で想像していたようなことが、どんどん実現されていくのだということが実感できますね。
3.コンクリート5階建てマンションもプリントアウトできます
(出典:WinSun)
2015年には中国上海にある「WinSun」というデザイン会社が、3Dプリンターで5階建てマンションと1100平米を超える2階建ての豪邸を建築し、各国でもニュースとして取り上げられました。こちらの会社はこれまでにも3Dプリンターで小さな小屋の製作は行っていましたが、コンクリートを出力して大きな建造物を作るのは、かなり大きな技術の躍進と言えます。
現在は、中国鉄道や様々な研究機関とパートナーシップを結び、ロシアやメキシコなどで3Dプリンターの工場を構築することを予定しているそうです。このように、建築の現場に3Dプリンターが導入されてきつつあります。人の手が必要なくなる日は、そう遠い未来ではないのかもしれません。
4.ドバイの本気!ガラスやインテリアまで100%プリントのオフィス
世界でもトップレベルの富裕国・ドバイでは、3Dプリンターの建築への導入は国家プロジェクトとして進められています。
世界最高峰の科学技術を結集し、2015年には高さ20フィート(約6メートル)もの巨大プリンターを用意しているのです。このプリンターを使用して、ドバイではコンクリートだけでなく強化繊維プラスチック・ガラス繊維石膏などの素材を出力し、現代的でスタイリッシュなオフィスを建築する予定とのこと。建物のみならず内装や家具類もプリンターで作るという、派手な建築の多いドバイらしい計画です。
この計画が成功すれば、このようなオフィスは数週間という短時間で設立することが可能になり、人件費は50〜80%削減、建設廃棄物も30〜60%ほどカットできることが見込まれるそう。より低価格で、エコな建造物がつくれるようになります。
5.個人で開発!自宅にお城を建設できる、近未来DIY
各企業が3Dプリンターの開発に取り組んでいるのはもちろんですが、個人でも新たな3Dプリンターの開発に取り組む人も登場しています。
アメリカミネソタ州のアンドレイ・ルデンコさんは、「車2台が置けるガレージ」サイズの巨大プリンターを開発しました。そんなアンドレイさんがこのプリンターを使って建設したのは、なんと住宅サイズの大きなお城!強度を補うためにセメントを使用していますが、崩れることなくキレイなお城の形を実現しています。
しかしこのプリンターでは50センチの高さを構築するのに8時間もかかってしまうそう。アンドレイさんは、この技術に興味のある建築関係者や学生など、コラボレーションできそうな仲間をさがしながら、さらなる改良を続けていくと語っています。
必要なのは、プリンターと想像力だけ!
以上のような3Dプリンターが産み出した驚きの成果を見て、テクノロジーが持つ可能性を改めて感じることができたのではないでしょうか。
コスト削減や、環境に優しいという面でももちろん重要で画期的ことですが、何よりも今回ご紹介した取組みはどれも夢のある話であり、人の持つ無限の想像力と、それを実現させる力を感じる事が出来ます。
今後の3Dプリンターの発展に大いなる期待を持って注目していきたいですね。