都内で偶然手に取った名刺入れ。洗練されたフォルムと、醸し出す上質な雰囲気に惹かれて調べてみたら、新潟県燕市の金型屋さんがつくったものとのこと。「ぜひ、作った方にお話を伺ってみたい!」という想いで電話をかけたことで、ご訪問に繋がりました。
その洗練された名刺入れの作り手は、株式会社MGNET(マグネット)。小さな名刺入れに凝縮された高い技術力の背景を知ると同時に、常に新しく面白いことに挑戦している、「最先端」な会社だということを感じました。
新潟県にこんな会社があるなんて!と驚かずにはいられません。そんな、株式会社MGNETの武田修美社長にお話を伺いました。
高い技術力を結集した名刺入れ
―本日はお時間くださってありがとうございました!本当に素敵な名刺入れですね。特にこだわっている部分を教えてください!
武田社長:こちらこそありがとうございます。まず、デザインにとことんこだわっています。横型の名刺入れが多い中で、うちは縦型にしました。昔のガラケーのように手に納まって馴染む感じが日本の所作というか、非常に日本らしい形状なのです。また、内ポケットに入れてもジャケットのシルエットを崩さない、スマートなデザインにすることも意識しました。
―なるほど!手の納まりがいいと感じていたのですが、これも設計のうちだったのですね。
武田社長:デザインもそうですが、この名刺ケースには構造学的にも考え尽くしてつくっています。この名刺ケース、普通ではありえないほど開いているんですが、わかりますか?
―…ごめんなさい、わかりません。
武田社長:そうですよね(笑)。普通、ドアと一緒で開閉で動く部分が外についているものなのですけど、その部分を中に入れたんです(丸で囲っている部分)。いかに開閉の限界を超えられるか、に挑戦してつくったのです。
―あ!!すごいですね!!!理解できたらめちゃくちゃ感動しました!!
武田社長:ありがとうございます!この名刺ケースは、いろいろな会社さんとコラボ商品を作らせていただいています。
武田社長:左から「玉川堂」さん、「諏訪田製作所」さん、「スノーピーク」さんです。基本構造は同じなのですが、それぞれ素材の性質が違うので、重量も質感も違います。それぞれに適した加工を施しています。
―素材に適した加工をするのって、とても難しいことですがそれを可能にしたのは、やはりプレス金型の製造技術があってこそなのでしょうか?
武田社長:そうですね。技術に関しては工場を見てもらった方が早いので、親会社である武田金型製作所に移動してみましょう。
武田社長:こちらが工場です。現在は大手車メーカーのシートフレーム部品をつくっています。うちの会社は、オープンに工場見学を受け入れていて、クライアントに差し支えない範囲の情報はどんどん発信しています。
武田社長:こちらはプレス金型です。分かりにくいかもしれませんが、うちの会社はこの機械全体をつくっているのではなくて、金型のみ(丸で囲んだ部分)をつくっています。金型は、金属板に押しつけて、金型の形に金属を抜くための器具です。
武田社長:こちらは「順送金型」と言って、1つのプレス金型の中に複数の工程の金型を等間隔で配列して、連続で抜くように設計されたプレス金型のことを言います。高価なものでは数千万円するものもあります。
武田社長:これは、アップル製品の背面部分です。長年培ってきた技術が認められ、世界的なメーカーのアップル製品の金型づくりに参加できたのは会社として大きな自信になりましたね。
―アップルから受注を受けたのは、御社がどういう点で他社より優れていらっしゃったからなのでしょうか?
武田社長:それは、「精度」の高さです。
武田社長:こちらをご覧ください。なんの変哲もないブロックのように見えますが…
武田社長:うちのブランドロゴが刻まれています!
―これはすごいですね!!!!
武田社長:ありがとうございます。これは精度の高い仕事ができないと実現できないものなのです。精度を高めることで、大量生産にも対応できる。この点でアップルに認めてもらったのです。では、武田金型製作所から再びMGNETに戻りまして……
武田社長:こちらは、ワークショップに使うための道具です。敢えて古い機械をあつめて、古き良き時代のものづくりを再現することをしているんです。女性のお客様が多いですね。
武田社長:こちらがオフィスです。
―白が基調でとてもスタイリッシュですね!
武田社長:学生の時から、製造業の3Kなイメージを変えたいと思っていたんですよね。綺麗な環境で雰囲気が良いところで働きたいじゃないですか。それを体現しました。
武田社長:壁にはコレクションを置いています。
※武田社長のお気に入りはアイアンマンだそうです。
―御社は地方ではとても貴重な存在だと思います。非常に都会的で新しいお仕事をされていらっしゃいますね。
武田社長:そうですね。工場としての働き方だけではなく、企画・開発・販売・広報という一連の流れも行っているので、外部の方とのコラボレーションも多いですね。最近では学校での講演もしたりして、それがご縁で女子高校生のメディア立ち上げをサポートしていたりします。
―女子高校生がメディアを?
武田社長:そうなんです。「美人な友達を自慢したい」とか「地元の良いところを発信したい」などの素直な気持ちから、女子高校生が動き出したんです。
彼女達の感性は自分には無いものなので日々カルチャーショックというか(笑)とても刺激がもらえます。こうやって、地元の活動とも絡めて行けたらなと思っています。
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武田社長の仰ることは常に斬新で、新しいものに挑戦する気概に溢れていました。1つの名刺入れからであった株式会社マグネット。今後も武田社長のご活躍に目が離せません!
株式会社MGNETホームページ:http://mgnet-office.com/