男性社会のイメージが強いものづくりの世界。そこで活躍されている女性にスポットを当ててお話を伺う「美女便覧」の連載第4回目です。
今回お話を伺ったのは、株式会社ニットーのプレス板金事業部の製造課で働く三輪茉利奈(ミワ マリナ)さん。
株式会社ニットーはプレス金型メーカーとして培った技術を活かし、開発から販売まで、一貫して行っています。現在のお仕事を始めてすぐ、ものづくりがご自身に合っていると感じられた三輪さん。お仕事を選ぶきっかけにもなったダンス、誰にも負けないというカシメ機を使った加工作業、働かれるうえで心がけていることについてお伺いしました。
-まずはお仕事の概要について教えていただいてもよろしいでしょうか。
主に組立です。自社製品のトリックカバー、くるみるの組立、最終チェック、発送を行っています。
-「トリックカバー」と「くるみる」ってどのような商品なのですか?
「トリックカバー」は、“無駄にかっこいい”ヌンチャク系iPhoneケースです。iPhoneを覆うケースと自由に回転・移動するカバーによって、 iPhoneをヌンチャクのように振り回すことができる楽しいiPhoneケースです。
また、3D-360゚フォトスタイル「くるみる」は、iPhoneと回転アームにより、被写体の360°回転画像が手軽に撮影できる製品です。
-どちらも非常にユニークな製品ですね!三輪さんは、なぜ現在のお仕事をされることになったのですか?
高校卒業後の進路を選択する際、幼少期から始めたフラダンスとタヒチアンダンスを続けるために、土日休みの職業に就きたいという希望を持っていました。そこで担任の先生に相談したところ、製造業を勧められたのが最初のきっかけですね。
特に仕事内容に興味があったわけではなかったのですが、始めてすぐに「ものづくり」が自分に合っていると感じました。
今でも製造業の仕事の傍ら、就業後や休日はダンスのインストラクターとして、若い人たちの指導をしたり、イベントステージでのショーに出演するといった活動をしています。
-最初は仕事内容に興味をお持ちでなかったとのことですが、働き始めて「ものづくり」がご自身に合っていると感じた理由について教えてください。
もともと、ダンスに使う衣装や飾りの製作が好きでしたし、得意でした。そういったこともあって、製造業で働くうちに自分が「物を作る」ことが好きだと改めて気付きましたね。
社会人になった当初はプレス加工を担当していましたが、製品を加工する際、薄い金属の板が製品として形を変えて完成していくことに魅力を感じました。
-フラダンスとタヒチアンダンスは現在も続けられているのですね!この2つのダンスの魅力はどのようなところにあるのでしょうか。
フラダンス、タヒチアンダンスは踊る曲の内容の意味を理解し、体で表現します。見ている人が流れてくる曲の意味を知らなくても、踊り手がそれを伝えられる踊りなので、それが魅力の1つだと思います。
始めたのが6歳の時だったので、大人になるにつれてその楽しさを感じられるようになり、今では生活の一部になっています。普段は月曜日、木曜日の就業後に指導しており、土日や祝日はイベントステージへの出演を依頼されることが多いです。
-写真からも、三輪さんが活き活きとダンスに取り組まれていることが伝わってきます。続いて、ニットー様の自慢できるところ、それが実感できたエピソードを教えてください。
最近は電車や街でトリックカバーを使っている人を見かけたり、偶然ですが知り合いが実際に使用しているところを見ると、ものづくりに関わっている実感が得られます。また、トリックカバーに限らず、普段生活している時にニットーで作られた製品を見かけて、その製品が役立っている所を見たときは嬉しく思いますね。
ニットーでは製品作りにおいて、自分の工夫や改善に対する意見を周りが取り入れてくれたり、その意見を聞いた上でより良い提案をしてくれます。それが完成品に活かされたときにも、やりがいを感じます。
-製造業というと力仕事や危険なイメージもありますが、実際はいかがですか。
力仕事に関しては、自分自身が普通の女性よりも力がある方だと思うので、あまり不便に感じる事はないです。危険だと感じることもありますが、ニットーでは周りの人たちが自分の意見を聞いて下さる方が多く、危険だと感じた時には積極的に、改善したい旨を口に出して伝えています。
改善に対する手助けも周りが協力的なので、安全で働きやすい環境にして頂いているように感じています。
-なるほど。三輪さんが提案された改善点はどのようなものだったのでしょうか。
男性の中で仕事をしているため、重いものが運びづらいことがあります。重いものでも、棚に置いてあったり、またそれが高い位置であったりすると、取り出そうとする際に落下させてしまったり、自分に降ってきてしまったりすることがあったので、低い位置に移動してもらったり、収納している箱のサイズを小さいものにして頂くことがありました。
-仕事の中で「これは誰にも負けない」と思う点はありますか?
「カシメ機」を使う人があまりいない事と、扱い慣れてきたこともあって、任される事が多くなってきたので、最も自信を持って加工が出来ることです。このカシメ機とは、軸を回転させ、加圧で金属を押し潰したり広げ伸ばす事で、二つの部品を結合させる機械です。
-その「カシメ機」を使った加工は、どういった点で難しいのでしょうか。
カシメ機は機械作業において、位置や型などを誘導する工具である治具を多く必要とします。そのため、製品ごとに管理したり、いくつかの製品と兼用している治具を把握しておくことが大変です。
また空気圧の微妙な調整に失敗すると製品に傷をつけてしまう原因となるので、その調整が難しいです。
-お話を聞いていて、カシメ機の作業は凄く難しいという印象を持ちました。ところで、製造業は男性が多いように思いますが、うまくやっていく秘訣はありますか?
今振り返ると、仕事を始めた当初は、力仕事も多い現場での作業に対して、多少ムキになって重量のある製品の移動なども自分1人で済ませようとすることも多かったように思います。
しかし、仕事をやっていくうちに、現場に女性が少ないこともあり、重いものを一人で運んでいたらそれを見て慌てて手伝いに来て頂いたりと、自分の行動が逆に周りの男性に気を使わせている場面があると感じました。それからは無理をしないといけないような力仕事に関しては、素直に「手を貸して下さい」と一言申し出るように心がけています。
-三輪さんが働かれるうえで心がけていることはありますか?
昔から注意力散漫な性格を指摘されていたので、仕事をしている最中は特に「自分は注意力に欠けているから、人の倍、注意して作業しないといけない」と言い聞かせています。
-その「注意しなくてはいけない」という状況で必ずすることについて、お伺いしてもよろしいでしょうか。
組立の作業は扱う部品が多いので、必要な部品の一覧にチェックマークを付けて確認するようにしていますし、組み立てる際には組み付ける順番に部品を左から並べてから作業しています。
また、作業の仕方を誰かに教わる時は注意点と、注意する理由をセットでメモするようにしています。
-お仕事について真摯な姿勢をお持ちなのですね。それでは、今後お仕事でやりたいことについて教えてください。
製品を加工するにあたり、使える機械が増えてきたので、その機械で使用する治具や工具の製作なども出来るようになりたいですね。
-ありがとうございました。お仕事とダンス、両方に対して活き活きと取り組まれる三輪さんから、熱い意気込みが伝わってきました。
三輪さんは加工作業の他、展示会で商品の良さや特徴を伝える説明員としてもご活躍されているそうです。株式会社ニットーは現在、医療現場のニーズから生まれたウェアラブルチェア、archelis(アルケリス)の開発を行っているとのこと。今後も株式会社ニットーから、どんな製品が生み出されるのか注目です。
株式会社ニットー WEBサイトはこちら:http://nitto-i.com