「テント」と言うと、アウトドアで使うものを思い浮かべがちですが、店先にもよく使われているのをご存知でしょうか。その用途は、雨除け・日焼け・カバー等と様々ですが、最近は店先のデザインの一部として取り入れるお店が多いそうです。
日常で何気なく目に入るものですが、「このお店お洒落だな」と思う理由は、実はテントのお陰かもしれません。それだけ店先の印象を大きく変える、非常に重要な部分なのです。
今回はそんなテントをデザインから施工までする、有限会社三鷹テントの菊地信和(きくちのぶかず)社長と、藤田亜未(ふじたあみ)さんにお話を伺いました。
お客様のニーズを考え抜き、デザインで期待にこたえることを信条にしている三鷹テントさん。それは社内外問わず心から人を大切に想う菊地社長と、それに共感する藤田さん、というあたたかい社内環境だからこそ成せるものだと感じました。
―御社で購入されるテントは、どのようなタイプのものが多いのでしょうか。
菊地社長:店舗のオーナーさんが多いので一番ご提案するテントは「デザインテント」です。これは店舗や住宅の入り口をイメージに合わせた演出ができるようにおつくりするもので、その他「オーニング」といって開閉できるテントも多いですね。
どんなものが欲しいかイメージをお伺いして、デザイン、制作、施工までやります。その他にも、看板やポスター、のぼり旗なども承ります。
―御社のホームページを拝見すると、とてもお洒落なテントが紹介されていてわくわくします。やはりデザインに重きを置いているのでしょうか。
菊地社長:ありがとうございます。その通り、デザインにこだわってつくっているのでホームページにもそれが伝わるように意識しています。
他社とくらべた上で、うちを選んでくれるポイントとしてはやはり、デザイン面だと思うので、その期待に応えて満足してもらいたいんですよね。言われたことをそのままやるのではなくて、お客様の目的に合ったデザインをご提案するのがうちの特徴です。
それなので、美容院・バー・古書店など、上質な環境をつくりたいという方が多くいらっしゃいますね。難しい発注が多いですが、店舗や個人邸のデザイン性の高いテントを提案するのにやりがいを感じていますし、それがうちの方向性かなと思っています。
こちらの写真は、吉祥寺のカレルチャペック紅茶店様です。店先のテントの施工のご依頼いただきました。もともとの外観がこのような感じです。
菊地社長:もともと素敵なお店だったので、そこへテントを導入するということで色・形などファサードに合うように考えました。
オーナーさんがずっとがんばってきて築き上げた素晴らしいお店ですからテントを付けてもっと素敵にしてお客さんに来ていただきたいと思いましたね。
菊地社長:見比べてみると、建物の正面のテントの存在感がよくおわかりいただけると思います。
テントってその建物に対しての大きさや形、色のバランスを良く考えないと品良くならないんですよ。ファッションと同じです。この案件では直線的な建物なのでシンプルな角型とし、ファサードを採寸して図面化しバランスを検討しました、色はセンスの良いオーナー様のご意見に同調しサッシュの色に近い赤にしました。
菊地社長:こちらの写真は、美容室LAMP様。直接ではなく店舗設計施工会社様を通してのご依頼だったのですが、オーナー様が弊社のホームページの飲食店のテントを気に入っていただき業者指定をしてくださったようです。
オーナー様も施工例のイメージを希望されていたので、設計は弊社で対応しキャンバスの割付図を書き1枚1枚裁断し縫製しました。個性的で、見栄えの良い仕上がりになったと思います。
菊地社長:こちらは、ジオデシックドームを専門に扱うユーロドームズさんのテントです。弊社ではその天幕を製作させていただいてます。
オーナー様は本業は特注家具屋さんですが高校生の頃からジオデシックドームに熱い思いを持っていて実際製作までされた誠実で正義感の強い方です。
多くのテント屋さんに相談され、最終的に弊社を選んでいただけました。
菊地社長:この写真は東北大震災後に被災地の仮設風呂として設置されたジオデシックドームです。震災後で何もかもが混乱し情報のない中、オーナーが手持ちのドームテントを車に積み込んで、後先考えずボランティアセンターが設けられた岩手県遠野市まで単身で走ったそうです。
ドームテントは強度も強くイベントなど利用できる可能性はたくさんあります、日本でもユーロドームズさんと共にもっと普及させたいと考えています。
菊地社長:これはドームテントの接合図ですジオデシックドームの裁断縫製は複雑なためCADを使っての設計が必要不可欠です。
―どれもとても素敵です!御社は昔からこのようにデザインにこだわられていたのですか?
菊地社長:三鷹テントは私の奥さんの父が経営していた会社で、私は5年前に入社しました。なのでデザインにこだわり出したのは、私が社長になってからですかね。もともと店舗の内装のデザイナーをしていたので、お客様にデザイン面で満足してもらうというのは譲れない部分でした。
―社員さんは何人いらっしゃるのですか?
菊地社長:職人、社員、会長が1人ずついます。全員で4人の会社です。人手は、足りないですね……。特に職人の技術の継承が悩みの種です。こちらの写真は、工房で職人がテントを溶着しているところです。
菊地社長:作業をしている職人は60歳で、16歳のときに三鷹テントに就職して以来ずっと従事してくれています。私もテントを縫ったことがあるのですが、やっぱり難しくて、何十年もやらないとわからないことがあるものです。どこも同じかもしれませんが、職人の後継者がいないというのが現状ですね……。
―せっかく差別化をはかられて、面白いお仕事をしていらっしゃるのに、由々しい問題ですね……。
菊地社長:機能だけのテントの需要は減っていくように感じますが、お店を飾る、家を飾るテントはまだ可能性があると思うんです。まだデザインというものが意識されていない業界なので、今後やりがいはあると思います。
今は余裕がないから受けられないけど、できれば外装や内装もやっていきたいです。テント以外の相談も増えているので、新しく入ってきた人によって、新しい仕事も生まれるかもしれません。
―人手不足はどこも深刻なのですね……。最近入社された方などいらっしゃるのですか?
藤田さん:はい。入社して1年ほどの藤田をご紹介します。
―よろしくお願いします。藤田さんはどういう経緯で入社されたのですか?
藤田さん:よろしくお願いします。もともとグラフィックデザイナーをしていたのですが、忙しくてずっと座って仕事をしていたら坐骨神経痛になったり、ストレートネックになったりしてしまって(笑)外に出たい!という想いで転職を考えていました。
住んでいる場所から近くて、デザイナーとして働ける場所は無いかと「三鷹、デザイン」とネットで検索をこまめにしていて、やっと見つかったのが三鷹テントでした。2歳の子どもがいるのですが、10時から17時の時短勤務で正社員として大好きなデザインの仕事ができて、すごく感謝しています。
―三鷹テントさんでどんなお仕事を担当されているのですか?
藤田さん:Webのデザインや更新、お問い合わせのあったお客様との最初のやりとり、あとはロゴデザイン等ですかね。意外とデザインの仕事が多いんですよ。
私、目立ちたがり屋なので、人の目につく仕事に憧れを持っていてウェブの仕事をしていたんですけど、ウェブサイトは季節が過ぎると無くなってしまったりするんですよね。でも、テントや看板のデザインは何年も残るし人目につくので、こっちの方がいいのではないかって思いました。
いろいろ施工のお手伝いをしましたが、その中でも嬉しかったのは吉祥寺のハーモニカ横丁さんの看板を施工させていただいたことですね。
藤田さん:こんなに人目につく部分を、自分達が施工できるんだ!と嬉しくなりました。本当は同じデザインで作り直せば良いお仕事だったのですが、どうしてももっと良くしたいとご提案して、色味は変えずにフォントデザインを少しアレンジさせていただきました。
テントや看板って意外とデザインを見られていて長持ちして残るものだし、意外とこんな近くに私がやりがいを持ってできることってあったんだ、と気が付きました。
―さらに良いものをという精神、すごく素敵です!他にもこのお仕事の好きなところってありますか?
藤田さん:いろいろな出会いがあることですね。自分で店舗のオーナーさんと打ち合わせに行くのも楽しいですが、三鷹テントのホームページを見て、テントって良いなと思って注文してくださった個人のお客様もいたりして。面白いお客様が多くて、そんな出会いも楽しいです。
外観や内装が素敵なところは、取材に伺ってホームページに掲載させていただいています。
―御社の雰囲気がとても良いのは、みなさんがやりがいを持って働かれているからですね。
藤田さん:社長がとてもやさしくて親戚くらいに思ってるんです(笑)。お客様はもちろん、人を大切にするって気持ちが本当に強い人なんです。私が冷え症だからヒーターを用意してくれたり、カメラを揃えてくれたり!
そんな社のために恩返ししたいなと思っています。わたしが業績をばりばりとわたしが上げて、箔押しの金色の名刺をつくりたいんです。
―と、藤田さんが仰っていますが、菊地社長、とても素敵な会社ですね。
菊地社長:そう思ってもらえるのは、ありがたいことですね(笑)
■編集後記■
温かい社内環境だからこそ生まれる、お客様想いなデザイン。今後どんどん求められるであろう三鷹テントさんのホスピタリティの溢れるお仕事の実績は、ホームページからご覧いただけます。
三鷹テント:http://mitaka-tent.co.jp/
こちらの動画はテントができる様子を切り取ったものです。工房の雰囲気、テント制作の一部工程をご覧ください。