「あの高級車ブランドが“ランドセル”を作っている」
皆さんは、想像できますか?
おそらく、あまりに意外な組み合わせに驚かれたのではないかと思います。
実は、トヨタに限らず、日本のいくつかの大手メーカーでは、その技術力や企業特性を活かして、まったく異なる領域でものづくりをしているのです。今回は、「えっ!あのメーカーがこんなもの作っているの?」と驚くような、企業の技術力を活かしたプロダクトをご紹介します。
値段はなんと15万円!?トヨタ・レクサスが高級ランドセルを開発!
最初に紹介するのは、トヨタが誇る高級車ブランド「レクサス」が作った ランドセルです。レクサスのこだわりを身近に感じてもらうプロジェクト「LEXUS collection」の一環として誕生しました。
自動車とランドセル。一見すると、どんな関係があるのか分からない両者を結ぶものは、“リアルソフトカーボン”と呼ばれる素材です。この素材は名前の通り、カーボンでありながら柔らかい肌触りをしており、折ったり、曲げたりと、文字通り柔軟な使い方ができる優れもの。車の内装にも用いられることがある素材です。
リアルソフトカーボンに加え、高級皮革“ベルバイオ”を採用したランドセルは機能性が抜群です。軽量・耐久性・耐水性という、ランドセルに必要な3要素を兼ね備え、かつその外観にはレクサスらしい圧倒的高級感が漂います。
価格はなんと15万円!簡単には手を出せないプライスですが、期待を超えた驚きと、その先にある感動を追求するブランドコンセプトを体現した商品だと言えるでしょう。
ウイスキーの“樽”を再利用!?サントリーが家具づくりに挑戦
続いて紹介するのは、サントリーがつくる“家具”です。
サントリーといえば、誰もが知っている飲料メーカーですが、ここでご紹介するのは、なぜか家具。
このプロダクトのルーツには、同社がつくる“ウイスキー”があるのです。
ウイスキーを醸すためには何が必要か、皆さんはご存知ですか?そう、“樽”です。
しかし樽は、ウイスキーが完成するとその役目を終えてしまうもの。
「役目を終えたら使われなくなるのは、もったいないじゃないか」と考え、有効活用させた形が、家具「サントリー樽ものがたり」というわけです。
役目を終えた樽は、解体され、蒸気で加熱され真っすぐに伸ばされます。こうして素材となった木材は、よく乾燥させた後、家具として生まれ変わるのです。椅子やテーブルはもちろん、インテリアグッズなど、バラエティに富んだラインナップになっているので、一度ご覧になってみてはいかがでしょうか。
病院や介護施設で続々導入!“車”のホンダが“歩行”をアシスト!
自動車メーカー「ホンダ」が生み出した、歩行アシスト装置を紹介しましょう。
車をつくる会社が、歩行を助ける製品を開発。
“優れたモビリティの実現”という点では共通していますが、ホンダ内のどのような技術が投じられているのでしょうか。
実はホンダでは、自動車だけでなく二足歩行ロボット「ASIMO」の開発も行っています。ASIMOの二足歩行を実現させた技術をベースに、歩行アシスト技術を生み出しました。
その仕組みは、股関節の動きを感知し、脚を前に振り出す動きと、地面を蹴る動きを機械がアシストするというもの。既に多くの病院や介護老人施設で導入され、足の不自由な人の歩行を助けています。再び自分の足で移動するという喜びを多くの人に味わってもらえる、モビリティがもたらす幸福をユーザーに提供するプロダクトです。
気分に応じてデザインを変えられる!?印刷会社・凸版印刷が手掛けるイヤーアクセサリ
国内有数の超大手印刷会社「凸版印刷」が手掛けるのは イヤーアクセサリです。
“印刷会社”と聞くと、紙を扱うイメージが強いですが、凸版印刷では、紙の読みやすさを維持したまま、書き換えが容易にできる電子掲示板“電子ペーパー”も提供しています。
そして、この電子ペーパー技術を活用して生み出されたのが、気分に合わせてデザイン変えられるイヤーアクセサリ「VIEWS」なのです。正四面体の側面に電子ペーパーを搭載しており、これが変幻自在のデザインを実現しているのです。専用の機器の上にアクセサリを乗せるだけで、デザインを変更できる優れもの。上の写真ではパステルカラーのデザインですが…
ご覧の通り、シックな色合いに変化します。デザインパターン総数はなんと50通り以上!
1つのアイテムで、幅広いコーディネートを実現でき、おしゃれ好きな女性にぴったりなアイテムです。“書き換えができる”という電子ペーパーの性質を、“さまざまなデザインを楽しみたい”というファッション感度の高い人のニーズと上手くマッチさせる。技術を新たな領域で展開するための好例です。
カーエアコンの技術を応用!トップクラスの真空度を誇る、デンソー発“ワインセーバー”
続いては、自動車部品メーカー「デンソー」が開発した“ワインセーバー”です。
このプロダクトの特筆すべきは、真空度の高さ。
競合商品の中でもでもトップクラスを謳っており、ワインを酸化から守り、長い間、味わいを維持できるのです。そしてこの商品を実現するために活用されているのが、カーエアコンや車載用の小型ポンプの技術なのだそう。
デザイン性も高く、誰かを家に呼んだ際は注目を集めること間違いなし。その上、“自動車部品のメーカーがつくった”となれば、話もきっと盛り上がることでしょう。ワイン好きの方は、ぜひ手に入れたいアイテムです。
錫と木でできた器!?3Dプリンターの出力事業を行うJMCが探る、鋳造の新たな可能性
3Dプリンターの出力事業と伝統的鋳造事業を行う株式会社JMCでは、錫(すず)と木という2つの素材を使い、器を作ろうと試みています。
“金属”と“木”という、性質の異なる2つの素材を用いて作る器の名は、“wood casting bowl”。器のデザインは取締役の山崎晴太郎が手掛けています。「相反する二つの要素を一つの形に帰結させる」ことがコンセプトで、溶かした金属を旋盤加工した木とつなぎ合わせ、定着させるという、工業製品の生産で培った鋳造・加工技術を活用するのだそうです。
社内の若いスタッフを中心に実現した同プロジェクトは、鋳造の可能性を模索するJMCの新たな挑戦という位置づけ。異なる素材が融合することで生まれる、独特な質感。そして単一の素材では感じ得ない肌触りが楽しめる、斬新な器を目指しています。
技術の転用は、画期的なプロダクト誕生のチャンス!
企業内に蓄積された技術を活用し、未開の領域のプロダクトを作り出す。こうして生み出されたものは、我々に意外性と共に、「このメーカーが作ったのだからイケている商品なのだろう」という安心感をもたらします。こうした、関係性は企業とユーザーの新しいコミュニケーションと言っていいでしょう。
現在、大手企業のみならず、伝統技術を用いたリプロダクションなども盛んに。国内に蓄積された技術が、次々と姿を変え、新鮮なプロダクトとして登場しています。次はどんな商品が私たちに新鮮な驚きを与えてくれるのか、楽しみに待ちましょう。