「なんだこれ!?」
得体の知れないプロダクトを前に、目を輝かせ、驚嘆の表情を浮かべる人々。
8月6日の東京ビッグサイトは、作り手としての衝動を爆発させたクリエイターと、プロダクトに魅了される観客の熱気で包まれていました。
今回は、ものづくりの祭典「Maker Faire Tokyo 2016」より、大人が情熱を注いだ“ぶっ飛んだものづくり”をご紹介します。私達の好奇心を刺激する、クリエイターの熱狂をお楽しみください。
大人も子供も白熱のバトルに熱中!ロボットプロレス「できんのか!」
最初に紹介するのは、プロレスをするロボット達です。
“子供がものづくりに興味を持つきっかけ作りをしたい”という思いから、2008年に埼玉県草加市で始まったロボットエンターテインメントショー「できんのか!」。二足歩行のロボット達が驚きの技を繰り広げながら闘うのだそうです。
「ロボットでそんなこと、本当にできるの?」
と初めは半信半疑になりながらも、試合を見てみると…。
なんとも愛くるしい見た目をしていますが、試合開始のゴングが鳴ると、その様子は一変し、いきなり激しい頭突きの応酬が!ロボットといえど、その迫力は本物のプロレスさながらです。
相手を滑らせるために、泡を噴出するというトリッキーなワザも炸裂。リングは子供達がたくさん取り囲んでいますが、その親御さん達もロボットの熱戦に大興奮の様子。親子揃って手に汗握って興奮する様子が印象的です。
勝負はアフロのロボットに軍配が上がりました。
観客からは「おおー!」という歓声があがり、大盛り上がりで試合は終了。日常的ではないイメージを持たれがちなロボットの存在を、エンターテインメントの力で身近にし、多くの人に興味を持ってもらいたい。ロボットプロレスのイベントをプロデュースしている小俣善史さんは、そう語ります。
大人も子供も関係なく、目の前の展開を食い入るように見つめる光景は、まさに小俣さんの思いが現実となっていることを感じさせてくれるものでした。
秘密はまな板の音と味噌汁のにおい。実家で目を覚ます感覚を味わえるアラーム
続いて紹介するのは、なんとも奇妙な見た目をした装置らしきもの。
実はこれ、実家にいるような感覚を味わえる目覚まし時計なんです。百聞は一見に如かず。次の動画をご覧ください。
maker faire tokyoへの出展が決まりました。#ジッカラーム #MFT2016 #MakerFaireTokyo2016 pic.twitter.com/zBYtct7zBx
— nanka (@nankasince2016) 2016年6月3日
準備はいたって簡単で、アラームをセットしておくだけ。時間になると、包丁で野菜を切る「トントントン」という音が聞こえてくるとともに、味噌汁の香りがしてきます。お母さんが朝早くからご飯を作る実家の一シーンが目に浮かぶのではないでしょうか。思わず微笑んでしまうアラーム 「JIKKALARM(ジッカラーム)」を開発したのは、あるメーカーの有志で結成された「nanka」というチームです。
“一人暮らしをしていても、実家の居心地の良さを感じながら一日を気持ち良くスタートしたい”
そんなコンセプトで開発された装置には細部に渡るこだわりが。包丁のスピードには、「おかんモード」と「新妻モード」があり、後者は包丁を使い慣れていない様子を表現するために、リズムが不規則になっているのだそうです。
技術・才能の無駄遣いとはこのことを言うのでしょうか。本当に面白いと思ったものを作る、というクリエイターの情熱が行き過ぎた一品です。が、いざ完成品を目にすると、あまりの脱力感に笑うしかありません。難しい技術を使わなくとも、発想次第で人を笑顔にする魅力的なものが作れることを証明する素晴らしい作品です。
頭の中でイメージしたものを具現化させる奇跡の芸当「木の歯車工房」
強烈なインパクトがある木のロボットアーム。
これをたった一人で作ったのは、なんと“現職の薬剤師さん”なのです。
「木の歯車工房」という名前で、驚くべき作品を次々に手掛けているのは、山梨県在住の山上哲さん。お子さんへの誕生日プレゼントとして作ったのをきっかけに、創作活動を始めたのだそうです。次の動画をご覧ください。
歯車が複雑に連動し、精密な動きをしています。これだけでも十分驚かされるのですが、さらに信じがたいのが創作方法。
「もともとものづくりが好きで、頭の中で作っていたんですよ。頭の中にあれこれ思い描いているうちに、『これは動く!』っていう自信が持てる瞬間があって。こうしたインスピレーションを受けたとき、実際に作っているんです。」
まさに天才的な感覚の持ち主である山上さんは、機械を見るとその構造が頭の中に浮かぶのだそうです。常識では到底理解できない次元でものづくりを行う彼は、今後どのような作品を生み出すのでしょうか。目が離せません。
心電図を音に変換!?音楽とファッションの融合「ウェアラブルシンセサイザー」
続いて紹介するのは、 “着るシンセサイザー”です。
発明したのは、IoTのものづくりを行う「dotstudio」の、うこさん。着用している人の“心電図波形”を読み取って音に変換する装置なのだそうです。
u.kokolabさんのウェアラブルシンセサイザー。パフォーマンスが楽しそう。かわいい。#MakerFaireTokyo2016 pic.twitter.com/J84vnaDYN7
— 五味@MakersNight:8/26 (@GomiHgy) 2016年8月7日
このように、鍵盤部分に指を置くと音階を出すことができます。
まだ試作段階ということですが、音楽とファッションの新しい融合の形として、製品化が非常に楽しみな作品です。
「論文のデータ、消えちゃった…」を防ぐ画期的な発明「論文まもるくん」
学生の皆さん。パソコンのトラブルで自分が書いていたレポートや論文のデータが消えて、それまでの苦労が水の泡になった経験はありますか。「取り返しのつかない状況になる前に!」「涙を流す学生を減らしたい!」そんな思いで九州工業大学出身の2人が開発したのが、「論文まもるくん」です。
キーボードの左側に取り付けられた怪しげな箱。
タイピングが終わって手をキーボードから離すと…
「保存中」」という文字盤が出てきました。
そして、「CTRL」と「S」のキーが同時に押されています。このキーは…そう!「上書き保存」をするショートカットキーです。
この装置があれば、勝手に上書き保存をしてくれるので、もしものことがあってもデータがすべて消えてしまうリスクが大きく減ります。学生の悩みをユニークな方法で解決してくれる、まさに”想像の斜め上”をいく発明品です。
「ものづくりの楽しさ」という原点に立ち返る
このように、Maker Faireには遊び心と意味不明な情熱がほとばしる“ものづくり”マインドが溢れています。
皆さんも”よく分からないもの”に対する、純粋なワクワク感を覚えたのではないでしょうか。
子供の頃、図工や美術の時間に親しんでいた、“ものづくり”のマインドを絶やさず燃やし続ける人達の作品に触れれば、あなたの「何か作ってみたい!」という気持ちも刺激されるはず。ちょっと見失いがちな、クリエイティブマインドを思い出すためにも、ぜひ来年は皆さんも参加してみてください!