8月の花火大会前に知っておきたい!時代とともに進化する“花火”の世界

8月の花火大会前に知っておきたい!時代とともに進化する“花火”の世界


轟音と共に、夜空を美しく染め上げる打ち上げ花火。多くの人にとって、夏の思い出として記憶に刻まれ、また、俳句の季語になるほどに、日本文化に浸透している存在です。が、意外にもそのルーツは日本ではなく海外。

一説によると、1613年、イギリス人によって中国製の花火が日本に持ち込まれたのが始まりと伝えられているそうです。しかし、伝来以降、打ち上げ花火は日本の花火職人達の創意によって、アップデートが繰り返されてきました。

そして現在、ものづくりの力や知恵、そしてテクノロジーの力を活かし、新たな花火の演出が生み出されています。果たして進化を続ける花火の“いま”とは。8月に行われる花火大会でも、楽しめるかもしれない花火の最新型を、ぜひチェックしておきましょう。

精密な職人の技術が織りなす芸術!花火ってどうやって作っているの?


“一瞬の美”を生み出す花火は、一体どのようにして作られているのでしょうか。

花火ができ上がるまでには、大きく分けると「配合」「星掛け」「玉込め」「玉貼り」の4つの工程があります。それぞれどのような作業なのか見ていきましょう。

1.配合
まずは粉末状の酸化剤や炎色剤、可燃剤を混ぜ合わせる「配合」を行います。この配合比率によって花火の光・音・色といった重要な要素がほぼ決まるので、職人達は細心の注意を払って配合します。

2.星掛け

配合が終わると、発色する火薬、“星”を作る「星掛け」という作業に移ります。花火の命とも言われる“星”を作るためにはかなりの手間が必要。1~2mmくらいの玉状の粒(「芯」と呼ばれています)を用意し、その上から水で溶いた火薬をかけて乾燥させます。

この工程を繰り返し、火薬を幾層も重ね、徐々に玉を大きくしていくのですが、1日にたった1mm程度しか大きくならないのだそうです。大きめの星は直径20mmほどで、完成までには2週間~1ヶ月もの期間を必要とします。

3.玉込め
続いては、「玉込め」という作業をします。

前工程で作った“星”を、玉皮(たまがわ)と呼ばれる半球状の容器に入れていきます。入れる際には、星と、星を飛ばすための割火薬を交互に並べることがポイント。2つの半球状の玉皮を重ね合わせて球状にし、いよいよ私達の知る、”打ち上げ花火の玉”の原型ができ上がります。

4.玉貼り

最後の工程が「玉貼り」です。

球状の玉皮にクラフト紙を何重にも貼り合わせていく作業です。玉をきれいに開くためには、包みが厚すぎても薄すぎてもいけません。絶妙な加減を実現させているのが、熟達の職人の技術と勘です。

このように、職人達の絶え間ない努力によって花火はでき上がり、私達に感動が届けられます。1733年に両国の大川(現在の隅田川)で川開き花火大会が行われた頃には、現在の打ち上げ花火の基本的な技術は確立されていたと言われています。が、言うまでもなく時間とともに技術は進化し、新たな花火の表現が生み出されているのです。現在の花火は、どのような進化を遂げているかを見てみましょう。

時間差で光る花火!姿を変えて美しさを提供する「スライド牡丹」


最初に紹介するのは、「スライド牡丹」という種類の花火です。上の動画をご覧ください。

時間差で横にスライドしながら花火が光るのが見えると思います。これは、花火職人が、先ほど紹介した“星”が発色するまでの時間を微妙な加減でずらしていくことによって実現されたもの。短い時間の中でも姿を変えていく”動的”な演出が、見る人の心を奪います。

光×光の演出!レーザー光線を使った花火ショー


続いて紹介するのは、レーザー光線と花火のコラボレーションです。

「光が夜空を照らし、花火が打ち上がる。」
花火に光を当ててしまうと、その美しさが半減してしまうのでは、とも感じます。しかし、一見掟破りである方法を実際に目にしてみると、どうでしょう。今までの花火とは違うエンターテインメントを感じさせてくれます。

従来の花火は、静かな空間に美しい光と音が響き渡る趣を楽しむものでした。しかし、まるで舞台のように光の演出が加わることで、ショーとしての花火という、新たな楽しみを私達に示します。

花火と音楽のシンクロ!コンピューターによる正確な点火によって実現したエンターテインメント

最後に紹介するのは、音楽との融合を実現した花火です。
動画をご覧ください。ただ音楽を流しながら花火を打ち上げているのではありません。そう、音楽のリズムにピッタリ合わせて花火が打ち上がっているのです。

まるでシンクロナイズドスイミングのような神業を実現させる秘密は、“点火のタイミング”にあります。
コンピューターを使い、綿密に計算されたタイミングで点火を行うことで、人の力だけでは実現できなかった精度で、打ち上がるタイミングをコントロールしています。

花火とテクノロジーが融合することで、レビューを楽しんでいるかのような感動を体験できます。

【番外編 vol.1】プロジェクションマッピングと水族館が生み出す幻想体験!「花火アクアリウム by NAKED」

noquaさん(@noqua)が投稿した写真

ここからは、”火を使わない”花火をご紹介します。
上の写真は、プロジェクションマッピングと水族館が出会い、生み出された 「花火アクアリウム by NAKED」です。

写真の中央にあるのが、ウォーターカーテンと名付けられた筒状の水の滴り。ウォーターカーテンと約160メートルにおよぶ空間の周壁に花火の映像が映し出され、幻想的な視覚体験を作り出しています。すごいのはこれだけではありません。イルカが音楽に合わせて技を繰り広げることによって、1つのストーリーを見ているような楽しみ方ができるのです。

テクノロジー、そしてイマジネーションによって、リアルの花火では味わえない体験を提供するアトラクションです。アクアパーク品川で、7月7日(木)~9月30日(金)の期間で開催されています。興味のある人は訪れてみてはいかがでしょうか。

【イベント情報】
イベント公式サイト
場所 アクアパーク品川
期間 2016年7月7日(木)~2016年9月30日(金)
開催時間 10:00~22:00(最終入場21:00)
※7月16日(土)~7月18日(月・祝)、7月30日(土)~8月31日(水)は9:00~22:00(最終入場21:00)

【番外編 vol.2】スマホを使って打ち上げ!?巨大ビジョンに自分の花火を打ち上げる「渋谷デジタル花火大会」

続いて、スマホを使って自分の花火を打ち上げられる「渋谷デジタル花火大会」をご紹介しましょう。

渋谷のスクランブル交差点近くにある大型ビジョン「Q’S EYE」のリニューアルを記念して、2013年に行われたイベントで、“参加できる花火大会”がコンセプトです。参加の仕方はいたって簡単。Q’S EYEの前に立ち、専用のアプリを使って花火を打ち上げるだけです。

すると、自分がスマートフォンで打ち上げた花火が、Q’S EYEに映るのです。リアルな世界の花火は見て楽しむものですが、デジタルの力を利用することで、参加して楽しむインタラクティブな体験ができるようになりました。

次々生まれる新作花火の裏にあったのは、花火職人達の不断の努力

これまでにない表現で、私達を楽しませてくれる新たな花火を紹介してきましたが、生で見ればその美しさに魅了されること間違いなしです。特に、音楽を取り入れた演出などは、花火に”動き”、”シンクロ”という新たな表現技法の萌芽を感じさせます。

今年あなたが目にする花火の裏側には、一瞬の美を追求する花火職人達の不断の努力、そして技術革新が隠されているはずです。今年は眺めるだけでなく、その技術的背景に注目してみると、さらに花火が楽しめるはずです。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です