IT専門調査会社 IDC Japan 株式会社の予測によると、国内における3Dプリンターの市場は、2021年には 1,124億円にのぼるそうです。
思い通りの立体物を出力してしまう驚きの技術として注目される3Dプリンターですが、「一体何ができるのか、結局何がすごいのか分からない」という方が多いのではないでしょうか。
そこで今回は、3Dプリンターの概論を交えつつ、私達の生活を豊かにしてくれる可能性を秘めた、3Dプリンターの驚きの活用事例について紹介していきます。
そもそも3Dプリンターってナニ?
3Dプリンターとは、3Dデータを元に、三次元の立体物を出力する装置のことを言います。これまで多くの時間とコストとがかかっていた製造のプロセスにおいて、3Dプリンターさえあれば3Dデータから直接作りたいものが作れることで、開発期間の短縮化やコスト削減が可能となりました。
日本では、手頃な価格で購入できる家庭用3Dプリンターの登場によって近年一挙に知名度を高めていますが、その歴史は意外と古く、アメリカで登場したのは1980年代。当初は自動車や航空機などの試作品作りに主に用いられ、「ラピットプロトタイピング」などと呼ばれていました。
3Dデータを元に一層一層、地層が重なっていくように材料を積層させ、立体にしていくのが基本的な原理です。一般家庭用のものから業務用のものまで、3Dプリンターの種類は多岐に渡り、価格は数万円~数億円とバリエーションがかなり豊富。
家庭用として広まっているものは熱溶融積層造形と呼ばれるタイプの3Dプリンターで、細いノズル(0.1mm~0.25mm程度)から熱で溶かした樹脂が押し出され、積層することでモデルを造形します。このタイプの3Dプリンターは2009年に一部の特許期限が切れ、装置の低価格化が起こったことで、ブームに火が着いたのです。
3Dプリンターの普及は、設備を保有している大企業のみが実現可能だったものづくりを、個人の手でも可能にしました。従来のものづくりの概念を根本的に覆すインパクトを持つことから、 「ものづくりの革命」と呼ばれています。
ここまで進歩している!3Dプリンターの驚きの活用事例
3Dプリンターと言えば、ちょっとした機械部品、はたまたフィギュアのような造形物を作る、というイメージがあるかも知れません。しかし、先に述べたように「ものづくり革命」たる3Dプリンターには、もっと大きなポテンシャルが広がっているのです。ここからは、3Dプリンターのユニークな活用事例をご紹介しましょう。
ミイラ
まずご紹介するのは、ミイラの複製。イタリア・南チロル考古学博物館が発表した、3Dプリンター製のこちらのミイラは、アルプスの氷河で発見された約5000年前の 男性ミイラ、通称「エッツィー」のものです。既存のCTスキャンデータをベースに、全部で3体作られ、そのうち1体は北米で展示され、他の2体は研究用の教材として使用されているそうです。
このように、3Dプリンターは考古学、医学の現場でも積極的に活用されています。同じくミイラ関連では、アメリカ・シンシナシティこども病院で、児童のミイラを3Dプリンターで復元し、死因調査にも使用したそう。
胎児のレプリカ
アメリカ・カリフォルニア州にある企業 「3D Babies」では、お母さんのお腹の中にいる赤ちゃんを3Dプリンターで複製するサービスを提供しています。超音波で胎児の状態をスキャンし、それから3Dプリンターの技術を用いて、胎児の各パーツや姿勢を正確に再現していくのだとか。
22~23週の平均サイズである20cm(約6万円)のほか、ハーフサイズの10cm(約4万円)、ミニサイズの5cm(2万円)と出力サイズも豊富です。
これは出産の記念として行われているサービスですが、胎児のレプリカを出力する技術は、目の見えない妊婦のために、レプリカをエコー写真の代わりに用いる、という使われ方もしています。
本来2次元だったものを3次元化することによって、これまで届けることのできなかった人々に価値を提供することができるということが分かります。
服
新しい服が欲しいと思ったときに、皆さんは何をしますか?
お店に行って、自分の好みや身体に合うような服があるかどうか探すのではないでしょうか。しかし、これも近い将来時代遅れだと言われる日が来るかもしれません。なんと、3Dプリンターで服を出力することが現実になっているのです。
この写真は、デザイナーであるDanit Pelegさんが3Dプリンターを使って作成した服。何も言われずにこれを見て、3Dプリンターで作られたものだと誰が分かるでしょうか。
服の出力に使われているのは、強度としなやかさに優れたFilaflexという素材です。この素材を用いて出力したものを、パズルのように組み合わせて衣服を構成します。現在のところ、私達が現在着ている服の素材には劣りますが、将来的には見た目や手触りが限りなく綿や絹に近づくようになると、Danit Pelegさんは語ります。
3Dプリンターが普及すると、何が変わるか。わざわざお店に行って服を選ぶ必要がなくなり、自宅にいながらにして自分にぴったりの服を選べるようになるのです。服を旅行先にたくさん持っていかなくても、その場で自分のお気に入りの服を出力することができる未来も近いかもしれません。3Dプリンターによって、服を作る工程、そして着る人間の意識にも、大きなパラダイムシフトが起きるかもしれません。
今後も目が離せない!3Dプリンターが私達の生活を変える
3Dプリンターは、単に「モノを生み出す」ことにとどまらず、その技術を駆使して私達の暮らしに新たな価値を提供してくれるということがお分かりいただけたと思います。
アイデア次第で様々な分野でその力を発揮することができる3Dプリンター。次はどのように私達の生活を豊かにしてくれるのでしょうか。