「まるでSFマンガ」なマッスルスーツが介護する人と”される人”を変革する

「まるでSFマンガ」なマッスルスーツが介護する人と”される人”を変革する


アベンジャーズ、ベイマックスにアイアンマン。誰しも一度は、人がマシンの力を借りて超人的な力を発揮するSF映画を観てスカッとしたことがあると思います。と同時に、それはあくまでも漫画や映画の中の夢の世界であって現実には起こりっこない、なんて心のどこかで諦めに近い感情を持った経験もあるのではないでしょうか。

しかし、軽々と重い物を運んだり、動けなかった人が動けるようになったり、そんな夢を本当に叶えてしまう様なものがあったとしたら…。

実はもう既に映画の中だけのお話ではありません。人の筋肉を補う夢の補助装置、マッスルスーツをご紹介します。

曖昧な人間の筋肉の動きを再現した「人工筋肉」


東京理科大学の小林宏教授が開発したマッスルスーツは「人の役に立ちたい」「人が生きる限りは、自立した生活を送ってもらいたい」という、小林教授の強い信念の元に生まれました。10年以上の開発に次ぐ開発を重ね、現在ではもう一部介護の施設等で動きの補助に使われ始めています。

マッスルスーツの一番の特徴は、ゴムチューブに圧縮した空気を入れて調整する人工筋肉です。この人工筋肉は、1950年代に発明された後には、長い間ほぼ誰からも相手にされない技術でした。
なぜ活用できなかったかと言うと「機械に取入れようとしたから」と、小林教授は語っています。 人工筋肉は、機械に活用するのではなく人間の動きに活用するからこそ真価を発揮するテクノロジーだったのです。

なぜなら、人間の動きや思考と言うのは機械のようには白黒はっきりしておらず「曖昧(ファジー)」であると言われており、逆に機械でそれを再現したり補助するのは難しいのです。

機械とは相性の悪かった人工筋肉こそ、その「曖昧」かつ繊細で微妙な人間の腰や間接の動きを補助するのにぴったりの素材だと言うのが小林教授の見解です。

マッスルスーツの動きと言うのは、主には身体の要である腰、および上半身やそれを助ける太もも部分のサポートです。スーツに使われている人工筋肉は、人の体同様に空気の力で伸び縮みをし、装着した人の呼吸や動きの早さを自動で検知したり、音声操作も可能になっていますのでいちいち操作のために何かを中断する必要がありません。

また男女問わずほとんどの人の間で共有しあうことができるのも大きな特徴と言えましょう。1人1台の特注品ではないため、例えばマッスルスーツを装着していた介護士が交代する場合には、交代時に付け替えればいいため、コストも抑えられます。

人の尊厳を守り、介護の仕事を支えるマッスルスール


現在、看護士や介護士達は腰を痛める人が続出し、そのために仕事を続けるのが困難になる人もいるようです。理由は、高齢者や要介護の人を抱えてお風呂に入れたり、移動させたりするためには、ベッドや車椅子からの移動時の補助に抱きかかえる、支えると言った動作がつきものとなり、結果、腰に大きな負担がかかるのです。

また、介護を受ける側もやはり心の葛藤があり、内心では人としての尊厳を傷付けられるというような意見もあるようです。マッスルスーツは、介護を取り巻く過酷な環境の救いとなっています。分かりやすい例としては、成人男性が10キロのお米を3つ分運ぶとフラフラしてしまう所を、マッスルスーツを着ればお米5つ分、つまり50キロをやすやすと持ち上げる事ができるようになるのです。

これは、小林教授が「人の役に立ちたい」と言う信念の元に改良に改良を重ねた人工筋肉の支えに基づく動きとなります。

 

高齢化社会に絶対的貢献

多かれ少なかれ、自分の老後や将来に不安を感じたことがない人はいないでしょう。しかし、食事や歩行、掃除や洗濯、そして一番抵抗を感じるであろう排泄などは、できることであれば人の手を借りることなく自分でやりたい、それが誰しもに共通する思いではないでしょうか。

現代日本は、4人に1人が高齢者となっており、今後20年の間には3人に1人の割合になると言われています。ますます高齢化社会へのスピードが加速していく中で、人が人らしく生きて行くためにマッスルスーツはとても効果的な補助装置といえます。

「人の役に立ちたい」と言う小林教授とそれを支える企業の強い思いで出来たマッスルスーツ、それは今後、我々の尊厳を保ち、人を支え、夢を叶える希望のスーツなのです。

出典:

INNOPHYS
http://innophys.jp/

人工筋肉で重いものも楽々「マッスルスーツ」KOAと東京理科大が開発
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1310/04/news124.html

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